第3回 「T-Engineフォーラム、マイクロソフト共同記者会見」

ちょっと時間がずれましたが、先月25日に行われたT-Engineフォーラムとマイクロソフト社の発表にEISの記者として出席しました。今回はそのレポートです。
当日夕刊各紙に記事が出ましたが、皆さんはいかが受け取られましたか。
本レポートであらためて意義を考えていただければ幸いです。

記者発表は9月25日11時、目黒の都ホテル。
150席で開始前にざっと7割以上はうまっている。歩き回る報道陣スタッフをいれると100人以上。あと関係者が50人ってところ。要するに満杯。TVは民報4台とNHK。新聞は全国紙という状況、すごい人集め! 事前に漏れないように苦労したんですねぇ。

さて、時間になると坂村さんは堂々と入場。
一方、古川VPは一礼して入場、発表でも腰が低く、坂村先生をたてている雰囲気。
やはり当世の人気どころが集まったせいか、記者連中は興奮。
お二人たるや、何も発表しないのっけから報道陣に握手を求められで写真撮影、なんだいこりゃ

写真提供:
T-Engineフォーラム殿

古川さん

歴史の説明と喧嘩という誤解を払拭する説明。

坂村先生

トロンPJの窮地を作り出だしたのがマイクロソフトというのは誤解

記者

:もっと深い話は別(?)

両者

喧嘩の仲直りの記者会見ではない、ことを強調。

記者

:すればするほど記事は逆になる、とかくこの世は・・・

古川さん

WinCEとソース開示の方針説明
トロンの流れがこれを加速(9月末現在T-Engineフォーラム会員は約250社)との趣旨。

坂村先生

T-Engineフォーラムは会社じゃないからマイクロソフトと競合するわけがない、と念押し。
続けて持論を展開され、
アジア地区は組み込みの基地、だから日本は強い、強くしなければならない。

 

T-Engineの説明(ミドルウェア流通が目的だ)
WinCEもオープンの流れに沿っている

 

今日の発表はT-Engineフォーラムとマイクロソフトで共同PJ、具体的な線表ができたので発表することにした。
マイクロソフトは幹事会員として参画し仕様策定に入る。

坂村先生

T-Engineフォーラムとオープンの趣旨に賛同いただければどことでもやる
既にLinuxともやっている

 

技術意義について
RTOS:トロン、情報OS;Windowsというように
ひとつのOSですべての応用をカバーすることはできない

 

もともとはトロンはHRD-RT指向なのだ
カーネルだけじゃシステムは作れない
それぞれ資産が蓄積されている

 

古川さん

発表だけの空砲ではない
マイクロソフトは既に技術検討を進めている、12月のトロンショーでデモできる(古川)
(構造の資料を使っての説明)

坂村先生

T-Kernelライセンスについて
GPL無関係、知財を考慮し、シングルソース管理、12月以降は完全一般公開

記者

:SCO問題は間接的に言及、ですね。

坂村先生

Forum形式というのは競争と協力を両立の21世紀型標準団体だ!

記者

:申し訳ないけど、マスコミに理解されたかどうか?

古川さん

技術接点を設け、ライセンス形態の違いなどを乗り越える
CE.NETで浸透しているがリアルタイム領域の製品でカバレージが狭かった SharedソースPGMがある、強みであるツールの提供と世界的取り組み可能
パッケージ製品としてWinCE.NET for T-Engine
さらに以下の説明があった
・WGでの共同仕様策定
・半導体3社のエンドーズ
・トロンショーでのデモ

坂村先生

時代は変わってきた。インターネットとPCだけの世界からの脱却だ。
マイクロソフトは巨大化して悪役を押し付けられかわいそう!
ルールさえ守ればガイジン力士の優勝はかまわない

記者

:ここは肝心なお話。トロンはアーキテクチャであり、相撲で言うなら ルールを定め、国技館という場を提供していることに相当するわけです。
坂村先生の発言は、国技館でルールに則り競う限り、ハワイ出身力士やモンゴル国籍力士がが優勝してもかまわない それは競争の結果である、というものです。もちろん、トロン純正力士も登場し正面切って正々堂々戦うわけで そして現在のトロン(T-Engine)には実力と自信があるので受けて立つ そういったことの宣言でしょう。

古川さん

UC(Ubiquitous Communicator)を手に古川VPが次世代の話をする

記者

:トロンショーでのデモを予感

古川さん

産業活性化を強調!大きな雪だるまが転がり始めた、大きな時代の節目だ

   

Q&A

 

Q:今回の関係はいつからどっちがアプローチしたか

古川さん

:T-Engineフォーラム設立当初からコンタクト、マイクロソフト社内アプローチは今年の2月
BillGatesはExcitingといった(both technology and business)

Q:WinCE.NET自身もリアルタイム性があるといっている、応用の棲み分けはどうする?

古川さん

:用途別、目的別ですよ。AirBugで動作までに砂時計がでても困るでしょう
(古川さん:会場で笑いをとった)

Q:なぜ今回はType2か

坂村先生

:Type3も可能性を排除していない(LinuxはType3で進行中)

両者

:開発のスピードを上げるためにもまずは現実的なアプローチから
 今後はマルチCPUも含めフォーラム内で仕様検討をおこなう

:Type1は携帯電話のような完全分散並列、Type3はA-on-BのVMスタイル、Type2は中間

Q:US本社の関係は

古川さん

:私は本社のVPです。今後調布の開発センターと本社のCEカーネルチームが担当する

   

坂村先生

:作業として大変なのはマイクロソフト側。これはLinuxも同じ。T-Kernelはμカーネルの位置づけだから 不変・不動

Q:声をかけたのはどっちか(この質問某新聞、ぼけてる)

坂村先生

:説明したとおり、オープンなフォーラムにマイクロソフトが入ってきたそれだけだ

Q:ビジネスのターゲット分野は

古川さん

:CAR、Digital家電、PVR、といろいろ。米国ではWinCE搭載ミシンだってある

Q:性能問題は

坂村先生

:非常に丁寧で長い説明、性能問題はありませんヨ。

記者

:質問記者が某新聞なのをしってかいろいろ説明されたが、結局よくわからなかったのでは。

古川さん

:必要ならリソースアロケーションをうまくかんがえれば問題ない

Q:ユビキタスIDセンター活動に発展するか

古川さん

:会話はしているが、その件は今日の趣旨ではない

 

以上で記者会見は時間切れ終了。

T-Kernelはマイクロカーネルですので、原理的にはどんどんゲストOSを搭載することはできますが、組込み分野ではそろそろ打ち止めでしょうか。

ただ、ダイヤモンドとか日経ビジネスとかの、ビジネス系雑誌が出はじめて、「対Linux陰謀論」を書き飛ばしているが気になります。
例によって対立構図をどうしても作りたいマスコミですが、Linuxは既にMontaVistaが発表ベースで3ヶ月以上先行し、頑張っているわけで、それ以上はそれぞれのOS陣営の問題でしょう。

 

古川さんが宣言されているように、今回の発表技術のプロトタイプがトロンショーでお目見えするようです。さらにRFID応用や万能携帯あるいはPDAが登場するだろうし、なかなか期待値が高いですね。

バックナンバー

>> 第1回 「ユビキタスIDセンター記者会見」

 

>> 第2回 「CASPIAN王子とRFID?」

 

自己紹介
1973年に日本電気に入社、以来、2002年に半導体部門が分社されるまで、他の会社に移ったことがないという典型的なサラリーマン。ただ、半導体部門でソフトウェアを志したため、社内ではメインストリートを歩むことなく今日に至る。
その一方、社外には友人が多数、トロンの坂村健先生とも20年来の付き合い。
メールアドレス:h-monden@mud.biglobe.ne.jp