イベント・リポート NO-26
Embedded System Conference Silicon Valley 2009 No-1
リポータ:EIS編集部 中村正規 |
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米国最大の組込みシステム技術関連のイベント、Embedded System Conference(ESC) Silicon Valley 2009が、去る3月30日から4月2日まで(展示会は3月31日から)、サンノゼ市のMcEnery Convention
Centerを中心とした会場で開催された。以下に今年のESC Silicon Valleyの様子を報告する。 |
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■大不況下での開催 |
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EISでは、2004年から4年連続で、ESC-WEST(2004、2005はサンフランシスコでの開催)を取材してきたが、昨年は諸事情から参加できなかったので、今年は2年ぶりのESC取材ということになる。昨年のESC
Silicon Valleyの参加者からは、「ESCは変わった!」との感想も聞いていたので、期待を膨らませての訪問だったのだが、まず最初に我々を驚かせたのはメイン会場の正面入り口にESCの開催を示す何の看板もサインもなかったことだ。
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ESC Silicon Valley 2009の会場入り口 |
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2007年ときの会場入り口 |
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上記2枚の写真を比較して欲しい。右側は2007年の時の会場入り口風景で、McEnery Convention Centerには、ESCの開催を示す巨大な看板が掲げられていたが、今年は左側の写真のように、ESCの看板が全くなかったのである。これは、昨年秋頃から顕著になってきた世界的な大不況の影響から、主催者のCMP社が経費を節減したためと思われる。大不況の影響は、当然ながら展示会の出展社数、来場者にも影響を及ぼしていた。例年であれば、渡米直前に展示会場近くのモーテルやホテルに部屋を確保するのは至難の技だったのだが、今年は出展社や来場者が減少したせいなのか、意外にも会場へのアクセスが非常に便利なモーテルをすんなりと予約することができた。展示会全体の出展社数は、ガイドブックから数えた限り、250社ほどあったのだが、これまで常に展示会会場入り口のそばに最大規模のブースを構えていたWindRiverとIntelのブースは見当たらないし、展示会場の両隅やコンコースにびっしりと並んでいた1小間から2小間のブースは2007年と比較すると半減したような感じだった。
主要な出展社のブース・サイズも一昨年と比較すると一回り小さく、ブースの装飾も全体的に控え目で、各社が出費を抑えたことを感じさせた。また、例年であれば、出展社がプレス関係者などを招いて、パーティを競うように開催していたのだが、少なくともプレス・ルームにはそのような招待状は1件も見当たらなかった。
このように、今回の世界同時不況は、このイベントにも大きな影響を及ぼしていた。一方、イベント全体の参加者については、主催者からの正式発表をまだ聞いていないが、恐らくここ数年の10,000-11,000人には達していなかったような感じであった。しかしながら、組込みシステム技術の業界に大きな影響を与えてきたこのイベントには、今年もいくつかの注目すべき出展社があり、感心させられたキャッチ・コピーの「Learn Today. Design Tomorrow」をはじめ、数々の併設イベントや企画など、ESC Silicon Valleyにはまだまだ人を呼び寄せる魅力があることは確かであった。
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■一番目立った出展社、Microchip Technologyと基調講演 |
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今年出展しなかったIntelやWind River、控え目なブースとなったST Microelectronics, Freescale Semiconductor、NXP Semiconductor、Microsoftなどの大手企業に代わって、ESC Silicon Valley 2009でもっとも目立っていた出展社としては、迷わずPICマイコンなど知られるMicrochip Technology社を挙げなければならない。
まず、同社は下の写真のように、Coverity社と共に今年の来場者バッジのスポンサーとなり、最も高い露出度となった。しかも、バッジの裏側には、同社のブースで実施されるトレーニング・プログラムがびっしりと印刷されていた。 |
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来場者バッジの表側 |
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同裏側 |
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基調講演のSanghi CEO |
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また、今年のESC Silicon ValleyのKeynote Speech(基調講演)を務めたのも、同社の会長兼CEOのSteve Sanghi氏(写真上)であった。Sanghi氏は、講演の冒頭でマイクロ・プロセッサの市場構造を氷山に例えて説明した。即ち、PCやサーバなどに代表される我々が直接目にするコンピュータ機器に使用されるプロセッサが年間4億個であるのに対して、目に見えない形で組込み機器にされているマクロコントローラ(MCU)の数は年間100億個にも達しており、この市場構造が海面に浮かぶ氷山のようなものだと説いた。そのうえで、MCUの高性能、低価格、低消費電力化が自動車含む主要なアプリケーションでの技術革新をどのようにドライブしてきたかを説明した。
同氏の基調講演の様子は、ESC Silicon Valleyの公式サイトの下記のアドレスからビデオ視聴できる。
http://esc-sv09.techinsightsevents.com/video_player
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マイクロプロセッサの市場構造を示す図
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Microchip社は、ESC Silicon Valleyの会期中、主催者のCMP社が発行している、EE Timesが毎年、企業や個人を表彰するACE Award において、「Company of the Year」にも選出されていた。Microchip社の展示ブースは下記の写真の左側のようなものであったが、隣接した位置にブースが配置されたライバル会社、Atmel社を意識したものともなっていた。Microchip社のブースのAtmel社側に向いた壁面には下記の写真の右側のように同社のPICマイコンとAtmel社のAVRマイコンとのベンチマークを示すグラフが何枚も掲示されていたのには、ちょっと驚かされた。 |
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Microchip社のブース
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Atmelブースに向けて貼られたグラフ
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同社は、このイベントに合わせて、ディジタル制御電源に最適化したという16ビットのDigital Signal Controller(DSC)、dsPIC33F”GS”シリーズなどの新製品も発表したが、その一部はEISのESC速報でも紹介したので参照して欲しい。(ESC速報3および4)
dsPICは新しいディジタル制御電源という新しい市場を確実に開拓しているようだ。 |
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■主要なRTOSベンダは? |
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組込みシステム業界の主要なOSベンダは、Wind River社を除く、Microsoft、Green Hills Software、Express Logic、Mentor Graphics、QNX Software、Monta Vista Software、LynuxWorksなどが、ほぼ揃って例年通りのブース規模で出展していた。例年であれば、これらのOSベンダからは、ESCの期間中にマルチコア・タイプを含む新たなプロセッサのサポート、新機能を追加した新バージョンなど、多くのプレス発表が行われるのだが、今年はその発表件数がかなり減少した感がある。その中でも比較的、多くの発表を行ったのがExpress Logicで、同社はソフトウェアのスタック・オーバー・フローを防止するための 解析ツール、StackX、グラフィカル・イベント解析ツールの新バージョン、TraceX V5などを発表していた。Express Logic社のブースでは、例年恒例のマジック・ショーが今年も開催され、多くの来場者を集めていた。このマジック・ショー、ステージに設置された四角い立方体の中に美しい女性を入れて、その後、そこから美女が消えたように見せるというもの。司会者が、「これぞ、エンベデッド」と叫んでいた。 |
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非常に目立ったExpress Logic社ブースと恒例のマジック・ショー |
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一方、Mentor Graphicsのブースは、下記左の写真のように、同社のRTOS、NUCLEUSの名前を全面に押し出したブースで、NUCLEUSを開発した、かつてのATI社が復活したような雰囲気さえ感じさせた。Green
Hillsのブースは、下記右の写真のようにプレゼンステージと大型ディスプレイを設置した目立つブースであった。Green Hillsのブースでは、この数年、同社がキーワードにしている「セキュリティ」が強調されていた。しかしながら、両社からRTOS製品に関する、目立ったプレス・リリースは行われなかったのは少し残念であった。
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Mentor Graphics のブース |
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Green Hillsのブース |
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