Embedded業界紳士録

第二十二章 イーソル株式会社 エンベデッドプロダクツ事業部 事業部長 上山伸幸


 組み込み業界への新潮流
  『eBinder(μITRON統合開発環境)』



イーソル株式会社
 エンベデッドプロダクツ事業部
 事業部長 上山伸幸


● 会社紹介(eSOL CO.,Ltd.)

はじめまして、上山(うえやま)と申します。今年の4月はじめからエルグ株式会社にお世話になることになりました。これを機会にかってながら、弊社の新しい製品の紹介等をさせて頂きたいと思います。
 エルグ株式会社は26年間、組み込み業界に主にソフトウエアの受託等を行うことをベースに活動してきました。設立はマイクロソフト社と同じ年で、会社規模では少し水を空けられましたが(笑う!!)数年後には肩を並べたいと思っています(真剣な顔で)。また、製品に関しては、OSやOSに関係した部分で製品開発を行ってきており、いまでも多くの製品で使用されています。近年はμITRON仕様のRTOSを日本ではじめて販売し、USB、TCP/IP, FILE等のミドルウエアも『ePARTS』として、販売をしております。
 ご存知の方も多いと思いますが、今年の5月には会社名を『イーソル株式会社(eSOL CO.,Ltd.)』と改め、製品の開発、販売にますます力をいれております。
 さて、私自身の自己紹介ですが、社会に出てからこのかた、ほぼすべての時間を組み込み業界に関係してきております。特にRTOS、半導体、開発ツールが専門の分野になります。最初の会社ではじめて開発したものがVMEbus仕様のボード開発で、この上で動作させるためのファームウエア開発時にRTOSに触れたのが最初の出会いでした。
 当時(16年前)は、組み込みといえば、工場用のFAが主体で、装置も大きく、開発時間も比較的長かったという印象でした。その後、組み込み業界はFAからOA機器に広がり、FAでは当然のように使用されていたRTOSがOAの世界にも広がりはじめました。何度かOA機器を開発されている部署にRTOSを紹介したのですが、その頃までOAではシングルタスクが主流で、RTOSの概念を説明することからはじめなければならず、結構大変な時間がかかったことを覚えています。
 開発期間がFAに比較して短く、また競争が激しいOA機器の世界では、あっと言う間にRTOSの使用が当然となり、組み込みのマーケットは拡大したと思います。
 現在の組み込み業界は、OA機器からコンシューマ(家電系)の製品へと発展してきおり、FAからOAに移るときと同じ状況がコンシューマ製品開発の世界で広がっているのではないかと思います。

● 組み込み業界におけるソフトウエアの爆発

 一昔前、組み込み業界以外でもソフトウエアの爆発ということがよく言われるようになりました。半導体メモリやCPUの性能向上によるソフトウエアコード量の爆発が予想され、ソフトウエア開発エンジニアの不足がささやかれました。この予想はある意味あたっていると思われます。その証拠にアウトソーシングや派遣会社は規模を拡大して、大きなビジネスとなってきいます。(勿論、人の流動化が進んだことも要因の一つだとは思いますが)
 先にも述べましたように組み込み業界として、もっとも発達している分野はコンシューマ製品に移っています。その最たる製品として携帯電話を上げることができます。30歳以下の携帯電話の普及率は、ついに冷蔵庫と肩を並べるところまできたそうです。FA,OA,コンシューマ製品を比較した場合、何がもっとも違うかといえば、それは品種の多さと開発期間の短さだと思います。初期の携帯電話は複雑なプログラムを書く必要もなかったと思いますが、最近の携帯電話では、いろいろな機能を追加することで、新しいサービスを提供するようになってきています。メモリサイズも格段に大きくなり、ソフトウエアの量が爆発的に大きくなり、しかも開発期間は、3ヶ月に一度Renewalされるというように、脅威の世界になっています。実際、前の仕事で携帯電話の開発エンジニアの方々と一緒に仕事をさせて頂いていましたが、携帯電話のソフトウエア開発をされている部署では、『不夜城』などど、呼ばれていました。
 もともと、シンプルな機能でよかった携帯電話は、各社が特徴を出すために、いろいろな機能が盛り込まれるようになりました。シンプルな開発手法で開発されてきた携帯電話では、ソフトウエアの爆発によって、人手不足になり、各社とも、新しい開発手法と開発環境の構築を急いでおられるのではないかと予想しています。

● 半導体とソフトウエアの開発環境

 携帯電話ではソフトウエアの爆発がおこっていることを申し上げました。少し視点を変えて、半導体の業界を見てみましょう。私は、一時、半導体のツール関係で仕事をしたことがありますが、ソフトウエア業界とは若干違っています。
 半導体業界でも製造技術の進化が激しいため、チップ単位の設計量は毎年増加してきています。この業界でも人手不足は同じように存在すると思います。しかしながら、開発をする環境を見てみると大きな違いがあります。半導体の設計でも、最初は回路図で設計が行われていましたが、その後、記述言語(HDL)が開発され、瞬く間に市場を席巻していきました。これは、ソフトウエアで言えば、アセンブラからCに代わっていったことと、よく似ていると思います。その後、より抽象度の高いツールが開発され、半導体のゲート数の増加に対処してきています。私からみると、半導体業界では、ゲート数の増加に合わせて、開発環境が発達して、開発エンジニアの設計不足を補っています。もうひとつ大事なことは、設計が階層化されていることです.トランジスタレベル、ゲートレベル、機能レベルと階層化されているため、下のことを気にすることなく上位の設計をおこなうことができます。つまり各階層がうまくモデリングされているわけです。
 半導体とソフトウエアを同じように語ることはできないと思いますが、半導体業界では、半導体開発メーカ、製造装置メーカ、ツールメーカが非常に密な関係を持つことによって、問題を解決してきているといえます。
これは、非常に重要な要素だと感じています。
 話をソフトウエアに戻しますが、ソフトウエア業界でも勿論、同じ努力がなされていますが、いままで十分であったかどうかは疑問です。
 これらを、インタフェース(CQ出版)1998年4月『フレッシュマン特集』に書いています。ご参考になれば幸いです。

● 海外の組み込み業界と日本の組み込み業界

 一言で組み込みと言っても、海外、特にUSと日本ではかなりの違いがあると思います。最初に述べましたように、日本での組み込み業界はコンシューマ製品へとシフトしてきています。FAはUSでも日本でも大きな違いはなかったと思います。しかし、OAからコンシューマへと変遷していく日本の組み込みと、USの組み込みとでは、近年温度差がかなりあるのではないでしょうか?
 コンシューマ製品に要求されるものは、短時間でコストを安く、信頼性を強く要求されます。世界市場の大部分を占める日本のコンシューマ製品の開発環境としては、そろそろ日本オリジナリティなものがあってもいいのではないかと感じていました。

● コンシューマ製品開発のための組み込み環境

 組み込み業界へ提供されている製品、サービスを分類すると、

1) カーネル等をとにかく安く提供する会社(安いがそれだけ)
2) 開発環境とOSを提供する会社(環境はいいが、高価でロイヤリティが発生する)
3) カーネルをフリーで提供する会社(カーネルはフリーだが、結局サービス料が高い。また環境が悪い)

と大別できると思います。
1) のパターンは安価に製品を購入することができますが、その後のサポートを充実させることができない場合が多いようです。
2) のパターンとしては、海外メーカが多いと思いますが、先にも述べましたように、日本のコンシューマ製品開発に関して、本当の意味でいい製品やサービスを提供していると言えるか疑問も残ります。
3) のパターンは一見、安価で、Goodなサービスと感じますが、エンジニアにとって開発のキーとなる環境が充実していないことが、最終的に他人の力に左右されることになり、長い目で見た際に、GoodなSolutionとなるか?若干疑問でもあります。

● eSOL社の今後の展開

 弊社では、先の2)と3)のパターンの中間を考えています。つまり、機軸となる充実した開発環境を提供すること、そして、お客様固有の問題等を解決するためのエンジニアリングサービスを提供していきます。
 弊社は、以下の3つを柱として『One Stop Solution』をお客様に提供していきます。

1)製品の提供

@ eBinder(μITRON統合開発環境)
A eParts(TCP/IP, USB, File System, Browser, OSEK, KERNEL(μITRON仕様))

 組み込み開発を行って26年の弊社が自身をもってμITRON仕様のカーネルを使用されているお客様に、今までと違う、統合的な開発環境を提供します。eBinderは、弊社が約3年をかけて開発しており、組み込み開発の環境を画期的に改善できると信じています。"こんな開発環境がほしかったが、高価で、しかもロイヤリティが必要!!"という不満はなくなります。

 eBinderの特徴は、

A) ターゲット側のOSに対してIndependentであること。現在のサポートはμITRONのみですが、近い将来、LINUX等々のOSサポートも実現することになるのでは?と思います。eBinderであれば、OSが変わっても開発エンジニアは同じ環境で作業をすることができるようになります。また、ビジネス的な観点からも重要なことがあります。お客様は、開発する製品の価格等に合わせて、本当にマッチしたOSを選べるようになります。ロイヤリティに悩まされることはなくなります。
B) ツールチェーンの強化(オープンインタフェース)されています。eBinderは、開発のプラットフォームと考えています。したがって、他のツールとの連携が大変重要になります。ICE等のみならず、上流ツールとの連携も容易に行えます。
C) 豊富な標準機能
@ ダイナミックリンキング:修正した関数のみをコンパイルして、ダイナミックにリンクできます。大容量のプログラムのコンパイルやリンクで、時間をつぶすこともありません。
A EvenTrek:タスク遷移、ステータス、セマフォ、などの状況をトレースして、ビジュアルに表示してくれます。デバッグの最終段階や実際の計測など、威力を発揮することと思います。標準機能として装備されます。
B PartScope:ソフトウエア部品のスナップショットを、エクスプローラ ライクなGUIで表示します。
C マルチコンテキストデバッグ:複数のタスクを個々に、かつ同時にデバッグすることができます。
D シェル:ベーシックな機能ですが、この機能の愛好家も多いのでは??
D) シミュレータ:CPUのインストラクションベースまでモデリング化したシミュレータを、eBinderに続いてリリースします。ハードウエアが完成するまで待つ必要はありません。

2)エンジニアリングサービス

 弊社は200人を超えるエンジニアを抱えています。また、その大半が組み込み関係に従事しています。お客様から頂く個々のご要望に、このエンジニアリング力を発揮させて頂けると信じています。ミドルウエアとしての製品の販売だけでは、仕事の半分をしたことにしかならないと考えています。その後のサービス等を充実させることが、大変重要なことだと思います。

3)サードパーティ製品の提供

 弊社の自社製品でなくとも、組み込みのマーケットにとって重要な製品に関しては、弊社も販売を行っていく予定です。しかし、右から左への販売ではなく、海外の製品を日本向けにチューニングしたりして、日本の要望に合わせた形態での提供を考えています。

● 最後に

 eSOLは3本の柱を核にして『One Stop Solution』を提供していきます。半導体業界でのツールの部分でも述べましたが、ツールの良し悪しは、それを使用していただくお客様の声を十分に聞くこと、そして密な連携を取ることがとても重要だと考えています。お客様にとって、本当に役立つツールへと、共に歩んでいただければ幸いです。また、非力ながら、日本の組み込み業界に少しでも貢献をさせて頂ければ、これに勝るうれしさはありません。
 よろしくお願い申し上げます。

● 私的観察(上山という人)

 生まれは京都のど田舎、丹波地方で育ちました。38歳です。山と川しかなかったので、遊びはもっぱら自然が相手でした。そのせいか、結構純情だと思っています。たぶん、嘘つきと言う人がいそうですが?それは、上山という人間の理解が少ない(笑う)と思います。
 大学は、京都の某大学(上加茂の北)へ通い、ギターとバイク、そして、貧乏生活を送っていました。
社会人になり、親のすねかじりからも卒業できたので、テニス部に入りました。勿論、下心丸出しで!!
ところが、なぜか素人の私は、厳しい練習コースに入れられて、真夏の練習では、何度コート裏で吐いたことか?テニスがこんなにシンドクて、苦しいスポーツだとは知りませんでした。
 社会人になってから、共通して言えることは、すべての部署、会社で、ビジネスの立ち上げを行ってきました。言い換えると、一生懸命、種を蒔き、育てて、収穫の時期には、また別の種まきをしているという社会生活です。運命か?自分の選択か?eSOLでも同じことになりました。
 前の会社での私のあだ名は"怒りんぼ将軍"、短気の代名詞になってしまいました。年齢を重ねるごとに、穏やかになってきたと思っていますが、友人は、"何も変わっていない"と言います。いい意味での、"怒りんぼ将軍"は自分にとっても大事かな?と最近思っています。
 最近の趣味は、家族でいくファミリーキャンプと温泉!! スキー、テニスは体力以外は若い人にも負けないつもりです。仕事も遊びもガンガンとばしています。組込み業界大すき人間です。お見知りおきを!!

PS:業界人でかつ、丹波地方出身者で"丹波の会"を発足させました。某ボードベンダーの社長や、私の上司、業界の有名人も結構います。参加希望者のかた、お待ちしています。(ちなみに次回は温泉へ行きますよ!!幹事は勿論"怒りんぼ将軍"です)

以上

Bob.N.Ueyama
Email: n-ueyama@esol.co.jp
WWW: www.esol.co.jp
 

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