第六十九章
『新たなるEmbedded Linuxの時代へ』
トライピークス株式会社
代表取締役社長 戸井田 穰
E.I.S読者の皆様、こんにちは。トライピークスの戸井田と申します。この度、「Embedded紳士録」に寄稿させていただく機会を戴き、誠に有難うございます。最近、トライピークスとかLinuxの瞬間起動などといった言葉を度々、耳にされた方々も多いのではと思います。今回はトライピークスという会社とその活動状況などについてご紹介させて頂きたいと存じます。最後までお付き合い戴ければ幸いです。
◆トライピークスという会社
トライピークスは、組込みLinuxの自社製品、Linuxプロフェッショナルサービス、Linuxインフォメーションテクノロジーサービスなどを中心とした組込みLinuxのトータルソリューションプロバイダーとして平成17年に設立を致しました。組込みLinuxは、平成12年以降、情報家電製品、精密機器製品、携帯機器など数多くの機器製品に搭載されるケースが増加し、商用リアルタイムOSとして一定の認知を得られる状況とまでになりましたが、昨今の製品機能の多機能化や、開発サイクルの短縮など、各採用企業における個々に点在する問題点や課題など、この5年間で確実に多様化しており、未だ成熟過程にある組込みLinuxには、まだまだ手付かずの領域があるのではと疑問を抱き始めたことが創業のきっかけでした。
組込みLinuxの基盤技術はもとより、アプリケーション分野での応用や理想的な実装など、数多くの課題が浮き彫りになってゆく中、独創的な技術の創出で更なる利便性の向上や製品価値に見合うソフトウェアプロダクト、サービス提供が出来ないか?と感じておりましたが、なかなかその実感を得られないでいた矢先、たまたま販売店においてデモ展示されていたDVDレコーダーの起動の遅さに目が釘付けになったことや、自宅にあるセットトップボックスが収納されているラックが、高温で撓んでしまったことなどの記憶が頭をよぎりました。言われて見れば、何方にもこんな覚えがあるのではと思います。これを機に機器組込み製品を生産する立場や利用する選択者の視線で、本来、必要とされ組込みLinux技術であるべきはずの未だに解決できていない技術や応用技術分野を、自らの技術創出で打破したいという想いを抱いた数名の仲間と共にトライピークスでこの事業を推進してゆこうと行動を起こした次第です。
トライピークスという社名について度々、お客様からご質問を頂戴することがありますが、その由来は、最高峰の技術を追求し創出提供し続けることにより、最も信頼され、将来にわたり満足のゆく、選ばれる組込み企業になることを目指し命名させていただいたものです。(よく3名で起業したから?と質問されることが多いので…)創業以来、自身も含め、我々を取り巻く全ての人々や企業の将来に渡る発展成長に、社内外を問わず、責任ある関わりを持つということを会社方針として日々、地道に努力いたし現在に至っております。

◆事業活動状況について
多少、会社の宣伝になってしまいますが、トライピークスの事業についてご紹介させて頂きたいと存じます。
私共の組込みLinux事業には、3つの中核事業があり、@Linux製品事業Aプロフェッショナルサービス事業Bインフォメーションサービス事業が主要3事業になります。中でも組込みLinux搭載製品の高速起動を実現する自社Linux製品であるTP InstantBootVer1.0を5月にリリースさせていただき、幸いにも数社のお客様にご採用戴き、又、先般開催されました、組込み総合技術展(ET2006)『組込みLinuxタウン』におきまして、通常ブート時間をアプリケーションも含め1/5まで短縮した実装事例やアーキテクチャ展開につきまして、発表させていただいております。



TP InstantBootとは、組込みLinuxOSを搭載した機器製品が増えるなか、多機能化による起動時間の遅延や低消費電力化を図るテクノロジーとして注目されている製品です。
仕組みは、組込みLinux搭載製品のメモリ内容やプロセッサのレジスタ情報をFlashROMなど記憶装置に保存し、起動時に保存した情報を復元することにより電源投入時から製品が操作可能になるまでの時間を大幅に短縮し瞬間起動を実現することが出来ます。

■TP InstantBoot Ver1.0の機能概要


上記製品に加え、来年、第二四半期以降にトライピークス独自及びオープンソースのテストツールを統合し、更にはアナライザー機能を装備したTP Test & Analyze Suite及び、主要ライブラリのメモリサイズを削減しメモリ使用量を削減することを目的とした、TP SmallFootprintなどの新製品を順次リリース致す予定ですので、ご興味のある方、是非ともご意見など戴ければと思います。

プロフェッショナルサービス事業については、Linuxのカスタムボード移植、カーネル拡張、パフォーマンスチューニングなどをはじめとし、組込みLinux製品の利用にあたりハードウェアやソフトウェアのパフォーマンスを適正に引き出す為のソフトウェアデザインを支援する、デザインサービスや、製品開発時、及び出荷後にかかわらず、何らかの原因で発生するトラブル対処、解析等のコンサルティングサービスなど、あらゆるLinux関連のサービスを提供させていただいております。今後はトライピークスの強みであるLinuxの基盤技術とその応用範囲を拡大し、高品質、高信頼性で且つ、製品価値を高める為のソフトウェアプロダクトとサービスを提供してまいりたいと存じます。

◆私自身と業界への想い
思い起こせば、時が経つのは非常に早いもので、平成7年に日系企業から外資系組込みOSベンダーに転身しその後、約11年間を外資系OSベンダーで活動してまいりました。
当初、日本企業において半導体ハード関連の仕事に16年ほど、従事していた時期も含め組込みという意味では、一貫してこの業界にお世話になってきたこと、特に外資系OSベンダーでは、pSOS、VxWorks、MontaVista Linuxなど数多くのRTOS及びLinuxなどの組込み企業において数々の知識と経験をさせていただいた事が、自身にとって大きな宝であると今更ながら実感しています。性格もありますが、あまり表舞台に出ることが不得意だったせいもあり私自身組込み業界の方々とのお付き合いも特定の範囲に限られておりましたが、会社設立を機に、心境も変化してまいりました。と申しますのも、組込み業界の諸先輩とお会いする機会も増え、その度に実感することは、殆ど100%の方々が、組込み業界の将来について熱い思いがあり実践しているということです。組込み業界の発展や貢献について、今までは、頭で理解していたつもりでも、具体的な行動で何かを行うといったことが出来ず、いざ自分が代表として活動しだして見ると、組込み業界の経営者の方々は、何時もこんな思いを胸に動いておられるのか!ということを肌で感じるようになりました。特にLinuxを生業としている私共はまさにこの様なことを率先し実施してゆく立場にあり、組込みLinuxソフトウェアを通じ組込み業界の認知度や有用性などといった組込み産業全体の底上げに寄与、貢献させていただけるような企業を目指し活動致してゆきたいと想う今日この頃です。

◆今後について
産声をあげたトライピークスではありますが、ご支援を頂戴いたしております組込み業界の諸先輩の方々やパートナーの皆様方に貴重なアドバイスをいただきながら一歩一歩、着実に自らの技術レベルの更なる向上を目指し、又、お客様や消費者の現場の声に沿えるようなソフトウェアプロダクト、専門性の高いサービス提供を行うべく誠意努力いたしております。数年後、数十年後にトライピークスが成人式を迎え、更に社会人に成長したとしても依然として日本発の組込みソフトウェアベンチャー企業として、日本人が持ち合わせているナショナリズムと文化を大切にしながら皆様方と共にトライピークスも成長してまいりたいと思います。

最後になりましたが、トライピークスという会社が、こんなことを想い、こんな活動をしているということをお伝えすることが出来ましたこと、E.I.S編集長の中村様及び関係各位様に御礼申し上げます。

Email:yutaka_toida@tripeaks.co.jp
TriPeaks URL:http://www.tripeaks.co.jp